石とひとくちに言っても、様々な種類があります。岩石は大きく3つに分類され、その内の「火成岩」に属するのが花崗岩。地殻の奥深くで生成される花崗岩は硬くて耐久性に優れていることから、墓石によく使用されます。中でも庵治細目石は特にきめが細かく最高級墓石材とされています。
石にも表情があるのをご存知ですか?種類や質によって、同じ模様はふたつとありません。庵治石の表面を見ると、ふんわりとしたまだら模様が浮かんでいるのがわかると思います。これは、主成分である石英と長石に黒雲母が含まれているために表れる珍しい模様で、「斑(ふ)」と呼ばれます。研磨することで石表面の黒雲母はより緻密に。潤いをたたえたような美しい濃淡が生まれます。また、表面が二重のかすり模様のように見える現象を「斑が浮く」といい、世界の石材でも類をみない特性です。この美しさが、庵治石最大の魅力といえるでしょう。
石は鉱物の結晶が集まってできています。結晶の大きさによって細目(こまめ)・中目(ちゅうめ)・荒目(あらめ)に分類され、庵治石は細目と中目にあたります。その中でもランクがあり、きめが細かく斑の浮き具合が美しいものほど上質とされます。特に「庵治石細目極上」は磨くと瑞々しく重厚な艶を帯び、その風格は格別です。
庵治石は風化しにくく、美しさを長く保つことでも評価されます。
石の硬さを分類する硬度でみると、庵治石は7。水晶と同じです。鉱物の結晶が緻密で強いため石の組織全体が締まっており、ほかの石材よりも硬いのです。
| 石の吸水率 | |
|---|---|
| 庵治石細目 | 0.19% |
| 庵治石中目 | 0.20% |
| 外国材の細目石 | 0.28% |
石の風化は、結晶の間に入った水が凍ったり溶けたりすることが大きな原因。花崗岩は異なる膨張率をもつ結晶でできているので、結晶の間に隙間ができやすいといわれます。しかし、庵治石は結晶が細かいため、膨張・収縮率が極めて低く、水を吸いにくいのです。風雨に長年さらされてもなお美しい理由です。
一般的な石材は月日とともに変色が進み、赤茶色になったり艶が消えてしまったりします。庵治石の場合、化学変化に強く、酸性雨の影響を受けにくいという特性も。表面が溶けて形や彫刻が崩れてしまうことがほとんどありません。
強靭さをもつからこそ、繊細な表現が叶います。水晶と同じ硬度をもつ庵治石は崩れにくく、細かな細工に最適。蓮の花びら一枚一枚の表現も活き活きと、文字を彫っても見映え良く仕上がります。
一方でノミが立ちにくく、高度な技術が必要とされる難しさも。加工には多くの手間と時間を要します。本当に良い庵治石には、確かな技術と意志をもつ職人が欠かせません。
年間に30万トン産出される庵治石のうち、墓石や灯籠など製品になるのはわずか1%。そのほかは建築や庭石に使われます。山が険しく石が採りにくいことや良質の原石が少ないことに加え、斑の美しさを揃えて採るのが極めて難しいためです。
他の丁場に比べて岩盤に入る亀裂が非常に多いので、同じ丁場でも少し場所が変わるだけで石の質が変わってきます。選び抜かれた石だけが庵治石製品となることを許されるのです。



